Wednesday 1 August 2012

軍隊蟻とマイリトルラバー

数年前
マイリトルラバーにハマった季節がある
学生の時には心底流行っていて、
クラスの誰もが、
駅に立っている誰もが聴いていた
よく有りがちな
死んだような波動の男性2人、
プラスチックのアイドル女性一人みたいな
他のJPOP同様、
それに何の興味、
1ミクロンも湧かなかった
其れどころか憎悪さえ感じていた春だったかもしれない

最初の記憶は
まだ改装前の拝島の木造の駅の前にいる時に、
怯えた目をしたヤンキーというか、人間に
「おめーがんつけてんじゃねーよー、うらこいよー」と徐に絡まれた時だった
その当時、よく知らない人によくからまれた
オレンジ色のメクラジマをきていた自分は
きっといい気分になっていたにちがいない
やべー、めんどくさいなーやだなーと思っていると、

「おまえこうこうどこよ? なまえいえよよこら」といって
全身をうえからしたになめるように見ながら犬みたいな顔で迫ってきた
「花子、山中花子だよ」というと
「てめーころすぞ」とすごんでくる
「いや、本当に花子っていうんだよ、学校も山中高校で、名前も山中だよ、俺は山中」
といって肩をポンっと叩くと
「てめーさわんじゃねーよ!!」とキが触れたみたい怒鳴ったから
「あーごめんよ」と

「いいからうらこいよこのガキ」

喧嘩が軍隊蟻なみに弱い自分は
「うら?うらとはうちのうらかい?うらってどのうら」
と恍けていると
「いいからこいや」と俺の肩にサッカー好きと思われる手をおいた
ここぞとばかりに
「おれの右肩にさわんじゃねー!」と砲丸投げの人みたいに叫ぶと
思わず自転車から落ちそうになった

突然、
当時やっていたパンクバンドで
ドラマーを叩いていたトネガワが救世主のようにやってきて
やんキー、人間を、平行四辺形の様な尖った目で、右脳で睨んでいた
「どうしたん?」
ヘッドホンをとると、
マイリトルラバーの「昔からある場所」が
信じられないくらい爆音で流れた
きっとその時のガールフレンドがくれたCDだったんだと思う
奴も何色かは思い出せないけど
目をくらますメクラジマをきていた
俺はそのときなぜか一瞬ニヤリと隠せない気分になった
廃墟の奥から
竹やぶの奥からなり続ける
顔のないアイドルの曲に聴こえた

「きえろ」

一言古い日本の映画の主役みたいにいうと
そのサッカーがすきそうなヤンキー、人間は去っていった
お前はなんてかっこいいドラマーなんだと
映画の脇役みたいに静かにいって
家に向かった

それから、だれかが俺の肩をさわると「おれの肩にふれるな!ぜったいにふれるなよ!」
と神経症まじりの冗談をいって戯けられる機会が増えた


その日からマイラバを聴いたのは約7年後だった
ロンドンの北のスーパーマーケット、セインズベリーズにいるときに突然、
頭にメロディが、何処かの高校の制服、バーバリーのマフラー、友達が付けていたヘアバンド、視聴覚室から流れてくる騒ぎ声、音楽室で練習している吹奏楽部の雰囲気とともにふわーっと浮かんだ

昔からある場所

改めて聴いてみると、懐メロでもなんでもない
普遍的なのにとても暗いメロディに、何をやっているかわかっているようでわかってないヴォーカルのアイドルの歌声がヨーグルトの様に混ざっていて、
世紀末のヴァーチャル感が、
未来を思い出させる雰囲気をそりゃもう放っていた
きっと小林タケシは現実の夢をみていたんだろう


当時友人とあぶらだこの月盤という
キャラの濃いレコードに夢中になっていた
偶然にもっていた古い雑誌で、あぶらだこのギターの人がマイラバの2ndを紹介していて
ほらねーやっぱりねーって嬉しくなって、
マイブラよりもマイラバになって何度も繰り返し聴いた


そういえば
これを書きながら思い出す

あの時の拝島の駅から家までの道
何年たっても
世界が平和になっても
憎むべき愛すべきその道はそこにある、
気がするだけかな

木漏れ日の形はよく覚えているけれども
時効になった未解決の事件の様に
記憶の光は
微かに漂う流線型に似ていて
そりゃもう
手が届くはずがない

そこには自転車を押しながら
恥ずかしそうに笑う顔が
白い太陽の中にとけ込んでいったのを
真顔になってじっと見つめながら
斜めにネジれた自分がいた







ハンガリーの飛行機の中できいてトラウマになった曲


この曲はきっとマイラバで一番すきな曲


前に渋谷のヴェニューでもんちゃんとコウヘイ君とカバーでやった曲


あぶらだこの冬枯れ花火という曲のビデオ


この安田成美の歌も通ずるものがあって素晴らしいビデオ


どうもしようもないビデオだけど極上のメロディ















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