Monday 16 July 2012

ボタン恐怖症の死神

子供の頃、ロングアイランドに居た頃、
その一角にあるアパートの庭で捕まえた緑色のカマキリを間違って殺した事がある
瓶に入れようと思ったら
体を捩ったマリアントワネットばりにガーンと首と手がふっとんだ
その時きっと俺はポロシャツをきていて、泣いていた

それが理由なんだか、
それ以来なんだかも分からないけど
記憶を辿ってゆくと一番始めのぼやけた記憶から
ボタンという形、存在そのものが許せない
そのいでたち、佇まい
とくに意味のないボタンの奴ら
袖や首に廻りに飾りとしてついてる輩にはもはや戦争なみの憎悪を感じる
今こうして、ボタンのボという文字をBとOで打ち出している事それにすら
脅迫神経症気味というか、無駄な圧迫感が納豆の糸みたいにつきまとう

けど昔からそのことは上手く説明できなかった
自分でも気づいていなかったのか
俺自身があまり考えてない莫迦だったのか
たぶんその両方なんだと思うけど



子供の時、マクドナルドのセットが喰べれなかった追憶の日
母親になんなのあんたは!と いわれて
とちくるったロナルドの目がこわいからいやだといったけど
店員が赤いポロシャツを来ていたからというのが本当のところだった

高校生の霞んだ季節には、
夏服の制服は半袖のYシャツだった
けど冬服用の青いネクタイを常にしていた
死んだ様な顔してるけどオシャレなやつだなおまえはー、
と理科のテロリストみたいな目をした先生に云われて
そうですね、っていって何回かステップを踏んで笑ったけど
本当はただYシャツのボタンをネクタイで隠したかっただけ
 
ある日カムデンにあるbarflyという場所で演奏することがあって
控え室で前のバンドのtea partyのドラマーのネルが、
「you know what, I fucking hate buttons I cant stand them」って
怨念を込めた眉間とともに俺を覗き込んだ
えーまじでー!俺もだよって
でもその時すべての歯車が走馬灯になって

フラットに帰ってネットで調べると、
すっかり独り言の様に笑ってしまった
「あなたはひとりじゃない」
の見出しで
ボタン恐怖症のサイトが存在していた
koumpounophobia という
なんだか、もう間に合わない深刻そうな雰囲気の
ドイツ語の名称もちゃんとついていた
プラスチックの種類がだめだったり、小さいのがいやだったり
銀色のステンレスだと平気だったり、全ての種類がもういやだったり
そこには色々なキャラの人々が書き込みをしていた
そのサイトは、もはや”ボタン”という言葉をいえない読めない人の為に
”Bワード”という言葉を使ってでサイトの説明をしていた
自分の中でくるくると踊っていた
ボタンの死神の存在を突き詰めたような気分になって
そのままサンダルでビールを買って
ひとりで乾杯した


恐怖症がある人にばったり出会うと
その人の陰にふれたようになって
嬉しくなってしまう
日常生活に影響がなければ
恐怖症ということにはならないらしいけど  
友人にも結構いる
エレベーター恐怖症、カエル恐怖症、
先端恐怖症、数字の6恐怖症(口語のみ)、
高所恐怖症、指輪恐怖症

恐怖は人の人生を変えてしまうくらいの
ポジティヴにもネガティヴにもなりうるエネルギー
なんとかポジティヴなエネルギーにトランスフォームできないものか
変毒為薬の目、そのステップ

大学の時にとっていたゼミで、
アメリカの経済全体は人々の恐怖で動いているという
ありがちな主題のエッセイを卒業の単位欲しさに書いた事があって
調べていくうちに心理学っぽくなってきて図書館の2階で夢中になった
黄色と赤のロナルドが、俺の隣の席に
縦長の目で剽軽に座っていた

カミソリガールズという阿呆な曲も書いた事がある


誰も名前の知らないピエロが、近隣を駆け回っているその様子
みんなテレビの雑誌の電信柱の言葉と写真をみて
知らない内にロナルドの馬鹿笑いに心をもってかれている

あの娘はカミソリガール
あの娘はカミソリガール

ーこの洗剤をつかうと服が真っ白になるわ
ーよく切れるカミソリで臑毛をそらなきゃルイルイの男の子にモテないよ
ーあなたが事故をおこしたら子供の近い未来はどうなるの
ー神様おねがい、あたしの肩にふれないで




 ピエロ恐怖症の女の人が、恐怖を克服しようとするドキュメンタリー




No comments:

Post a Comment